事案の概要
依頼者の従業員であった相手方が、在職中に依頼者の取引先に働きかけ、退職後、依頼者から取引先を奪取した事案である。
解決までの経緯
相手方に対して訴訟を提起し、取引先が奪われたことによって、本来、取引が継続していれば得られたであろう利益(逸失利益)を請求した。
訴訟は2年に及んだが、最終的には、相手方が依頼者に対して一定額の賠償をする形で和解が成立した。
弁護士の目
従業員は、雇用契約上の義務として、在職中は会社と競業する事業を営んではなりませんが、退職後は、原則として自由に事業を営むことができます。従業員にも「職業選択の自由」があるからです。
もし、従業員に対して退職後の競業を禁止する場合には、誓約書、就業規則などで、その旨を合意しておかなければなりません。また、合意していれば無制限に退職後の競業行為を阻止できるかといえばそういうわけではなく、①禁止の期間、②場所的範囲、③代償の有無、などを考慮し、制限が過度だと評価された場合には競業避止義務規定は無効と判断されます。
退職後の競業避止義務条項の有効性判断は難しいので、退職後の競業避止義務条項を新たに設けようとする場合や、既にある同条項を適用しようとする場合は、事前に弁護士に相談してください。ビジネス的な観点も踏まえてアドヴァイスを差し上げます(たとえば、裁判例上は2年くらいが限度ですが、退職直後から1年禁止するだけでも取引先奪取防止には十分な場合が多いです。)。
なお、実際に、本件でも相手方から退職後の競業避止義務条項の有効性は厳しく争われました。


