事案の概要
元従業員が事業用車両の管理を怠ったため、故障し、廃車になったため、従業員に対して損害賠償請求したいとご相談に来られた。
解決までの経緯
まず、弁護士は相手に請求書を送った。すると、相手は、ある程度支払う考えを示したが、他方で、賃金等についての未払いなどの主張をしたので、交渉でまとめるのは難しいという判断に至った。
そこで訴訟を提起し、相手も賃金等の支払いを求めて反訴を提起した。
そして、判決の直前で裁判官から和解の勧告があり、相手から会社が妥協できる金額の支払いを受けることで終わることができた。
弁護士の目
従業員に対する損害賠償については、従業員に過失があったとしても、すべてを従業員のせいにして発生した損害の全額を負わせることは困難です。
そもそも従業員のミスは、会社の業務に内在するリスクですし、会社は従業員の労働によって利益を得ているのに何か問題が生じたときにそれを従業員に全て負わせるのは不公平との考えから、責任を限定する法理が判例上認められています。裁判例を俯瞰すると、ケースバイケースですが、25~30%程度を認める事案が多く、50%超を認めた事案は稀です。
そのため、弁護士としては、この責任を限定する法理があるとしても、その従業員のミスは許されないものであることを主張する必要があります。また、会社としてはミスが発生しないように対策をとっていたことなども主張しなければなりません。
この事件は、和解で終わったので、どのように裁判所が判断したのかはわかりませんが、もともと予想していたとおりに損害の50%を支払うという内容の和解で終了することができました。
従業員に対する損害賠償請求は、経営者にとって二の足を踏む面もありますが、会社として何もしなければ「不注意で会社に損害を与えてもお咎めはない」という雰囲気が醸成され、モラルハザードにもつながる恐れがあります。損害賠償請求までするかどうかはともかく、従業員のミスについては、厳重注意・懲戒処分等の然るべき対応を採ることが大切です。


